ADHDに向いた職業とは?
イーグル牧師は当然ながら、杓子定規に淡々と教えた。
アルヴァ(エジソン)は、そんなふうに教えられると、うわの空になる。
どこか遠いところに思いをはせたり、席についたままたえまなく体を動かしたりした。
牧師は、注意散漫で手に負えないと考え、ムチをふるう。
アルヴァはおびえ、疎外感をいだき、数週間ほど我慢したあと、学校から逃げ出した。
ロバート・コノット
『トマス・A・エジソン ― しばしの幸運』
ADHDのもつ特殊特別な能力
あなたはADHDと聞くと
どのようなお子さんをイメージするでしょうか?
おそらくほとんどの人は
落ち着きがなく、授業中に座ってられないなどを
イメージすると思います。
ADHDの大きな特徴のひとつが
多動性・注意散漫であり、
発達障害の中でも最も多い障害とされています。
ADHDの特徴である、
多動性などは、脳の神経伝達物質のうち、
セロトニンやドーパミンなどが普通よりも少ないためと言われています。
セロトニンは脳の興奮を抑えるための物質ですが、
ドーパミンは脳を興奮させるための物質です。
ADHDはドーパミンが少ないため、
常に刺激に飢えていて
それが多動性、注意力散漫の原因になるとされています。
発達障害者が社会で活躍するには でも書きましたが、
ADHDの様な多動性、衝動性は
原始時代のような「狩猟者」として有能な人物とされてきましたが、
現代における学校教育ではマイナスの面とされる場合が多いです。
では、現代社会でADHDの特性のひとつである
多動性や衝動性など
刺激に飢えた脳を活かす仕事とはあるのでしょうか?
ジョージア大学トーランス創造性研究・能力開発センターの
センター長であるポニー・クラモンドによると、
ADHDと創造力のある人を比べたところ、
両者の能力の違いを見分けることができなかったようだ。
つまりADHDの人の持つ「衝動性」は
創造性のある人では「自発的」と呼ばれ、
マイナスの能力ではなく、プラスの能力とされたようです。
他にもADHDの「注意散漫」は
創造性のある人では「型破りな思考」となり、
「多動性」は「活力源」というプラスの能力とみなされたのです。
また、ADHD(注意欠陥多動性障害)の「注意欠陥」は実は
普通の人が注意を払っていないものに注意を払うのがうまい
ということもわかってきており、これは「偶発的な注意」と呼ばれ、
創造性のある人の特徴と一致するとされています。
例えばあなたが「電車」について覚えなさいという宿題を出されたらどうしますか?
ほとんどの人は「電車の名称」や「駅の名前」、「止まる駅」など
似たり寄ったりの情報を覚えると思います。
しかし私がこれまで担当してきたお子さんの中には、
「列車の製造工場」、「電車の歴史」はてには「電車と政治的関係」など
一般の人が考えもしない(注意を払わない)ところに注目し、
私たちを驚かせることも少なくありません。
さらにADHDの人は集中力が続かないとされていますが、
自分の「興味を持ったこと」については
夢中になって何時間でも集中することもあります。
私の知り合いの人にも仕事に集中できず、怒られてばかりなのに
休日は寝るのも忘れて趣味のプラモデル作りをしている人もいます。
ADHDの特徴である「注意欠陥」は
マイナスの能力と捉えられてしまいますが、
一方で「注意欠陥」がもつ
たったひとつのことに何時間も集中する能力 は何千年も昔から
ずば抜けた精神力の特徴とも考えられてきました。
つまり、ADHDの脳は普通の人の脳と比べて
注意の仕方が異なる ということであり、
自分の興味のあることをとことん極めようとする
ほかの人には真似できない集中力を持っていると
言えるのではないでしょうか。
ADHDのお子さんが社会で活躍するためには
ADHDの特徴を病気扱いせずに
一人の素晴らしい個性的な才能ととらえることも必要なのではないでしょうか。
ADHDの子どもに最適な環境と遊び
ADHDのお子さんは興味の範囲が狭く、
お子さんの数だけその範囲が様々です。
お子さんの特性を把握するためにも
普段の何気ない生活の中から
お子さんの興味関心がある分野を見つけ出し、
それに集中できる環境を整えてあげることが大切です。
では一般的にADHDのお子さんの特性を活かせる環境とは
どのようなものなのでしょうか?
ここに2つの環境があるとします。
- 部屋で静かに座ってお勉強をする環境
- 外で泥だらけになりながら元気に遊ぶ環境
あなたならどちらの環境がADHDのお子さんの特性を活かせる環境だと思いますか?
もちろん個人差はありますが、ADHDのお子さんは
刺激に飢えた脳をもっていると言われています。
そのため、静かで落ち着いた環境で過ごすよりも
多動性や衝動性を発揮して遊べる環境の方が
ADHD本来の才能を伸ばせる場合があります。
イリノイ大学・人間環境研究所の所長である
フランシス・E・クオ教授は
計算や文章を書くなどして集中したあとは脳が疲労し、
その疲労は自然の中にいると回復が早まる
と述べています。
特にADHDのお子さんの場合、
常にドーパミンが不足・消耗しているため、
自然の中で遊ばせるなど野外での活動を行うと
ADHDの症状が改善されるとの報告もあります。
また、オハイオ医科大学の心理学名誉研究教授の
ジャーク・パンクセップ教授によれば
アメリカでADHDと診断される子どもが増えているのは
大勢で毎日、元気に荒っぽく遊ぶ場所や機械がなくなり、
自然の生物学的な欲求が満たされなくなっているから
とも述べています。
では現代の日本において、お子さんの1日の行動はどうでしょう?
学校の中ではおとなしく座って授業を受けるように教育され、
学校以外の時間でも塾で勉強したり、
部屋の中でスマホやゲーム、動画などを観て過ごすお子さんが多いのではないでしょうか。
もちろん勉強は大切ですし、
住んでいる地域や家庭の環境によって
出来る事、やるべき事は違ってくると思います。
ですが、ADHDの脳の特性を考えた時、
公園で野球やサッカーなどのボール遊びをしたり、
動物園やアスレチックなど
元気いっぱいに「多動性」や「衝動性」を解放してあげる時間を作ってあげることで
ADHDのお子さんの能力を伸ばしてあげる教育につながることも考えてあげると良いと思います。
ADHDの人が活躍できる仕事とは?
これまで見てきたように
ADHDにとって好ましいとされる環境をまとめると
- 身体を動かすことができる
- 変化に富んでいる
- 刺激にあふれている
となります。
ではこのような条件を満たすお仕事はどのようなものがあるのでしょうか?
あるアメリカの研究によると
消防署の職員の半分以上に
ADHDの特徴を多く持っている職員がおり、
ADHDの人は優秀な消防士に求められる資質である
創造性、読経、素早い決断 を生まれつき持っている
と言われています。
また、会社員として働くよりも
ビジネスで起業家として活躍する人材にも
ADHDの特性である
行動力や創造性 を活かせる職業であるとも言われています。
、
アメリカの心理学者であるキャスリーン・ナドーは
「ADD(ADHD)の人は精力的で、信じられないほどすばらしい発想をします。
自分から進んで十二時間から十五時間も楽しく仕事をすることもよくあります。
ビジネスの世界はADDを恐れてはいけません。
恐れるどころか、金の卵を産む鶏になりそうな人たちがいることを
知っておくべきです。」
とABCニュースの中で述べています。
現在の日本の学校教育では
狭い分野で活躍する天才を育てることよりも
一般的な会社でルールと社会を守る人材を育てることに
力をいれており、
エジソンやアインシュタインの様な人よりも
毎日きちんと会社に通い、決められた仕事をミスなくこなすことができる人を
育てようとしているのです。
もちろん、この世界は大多数の
普通のサラリーマンの皆様のおかげで成り立っていて、
この方々がいなければ私たちは生きていくことができません。
しかしADHDの人はこのような
大多数の人が頑張っている世界とは違った世界の方が
その能力を活かすことができる可能性があるかもしれません。
ADHDの人が能力を発揮できる仕事として、
- 野外で自然に触れる
- しょっちゅう移動したり旅行したりする
- 自分の手を使って仕事をする
- 日々新しい状況に積極的にかかわる
- 緊急事態に対処する
- 体を動かす
- 短い時間に様々な仕事をする
- 芸術など創造的な探求にたずさわる
- ひとりで作業ができる
などの要素がある仕事が適しているかもしれません。
お子さんの適性をよく見極め、
ADHDの症状を才能に変えてあげることで
あなたのお子さんの能力を活かせる仕事が見つかると思います。
ADHDの特性を活かせる仕事の一例
- ラジオのアナウンサー
- 訪問販売員
- 音楽、ダンスの先生
- 新聞記者
- ラジオ、テレビのレポーター
- 警察官
- 消防士
- 自然写真家
- 建築業者
- 工芸家
- 画家、彫刻家
- 発明家
- 設計士
- トラック、バス、タクシーの運転手
- 農業、酪農
- スポーツ選手、コーチ
- エアロビクス・フィットネスのインストラクター
- フリーライター
- 飛行機の操縦士
- 電車の運転手 など
このページは
脳の個性を才能にかえる
を参考にさせていただきました。