自閉症スペクトラム障害に向いた仕事

 

最初の石槍を作ったのは

高機能のアスペルガー症候群の人だ。

たき火を囲んでおしゃべりしていた、付き合いの良い人たちではない。

テンプル・グランディン(ニューヨークマガジン誌)

自閉症スペクトラムの特性とインターネット

一般的に自閉症スペクトラムの人は
コミュニケーションが苦手な場合が多いです。

 

それは相手の気持ちを察することや、
推測する能力が低いためとされています。

 

社会とは少なからず他人とのコミュニケーションで成り立っています。

 

ではコミュニケーションが苦手な自閉症の人は
社会に適応しながら働くことはできないのでしょうか?

 

私たちは無意識の中で
相手の表情や仕草、ちょっとした言葉のニュアンスなど
様々な情報を複雑に整理することで
「手の心を読む」ことができ、「推測にもとづいて行動」することができます。

 

自閉症の人はこのような一般の人が無意識で行っている情報の処理が苦手なため
コミュニケーションをうまくとることができず
社会の中で生きづらさを感じてしまうことがあります。

 

しかし考え方を変えれば、
コミュニケーションとは人と人が
直接顔を合わせて行うものだけではないはずです。

 

それは今この瞬間、私とあなたの間で行われている
インターネットを使った「文字」によるコミュニケーションが当てはまります。

 

インターネットでは表情や気持ちを読み取るといった能力を必要としないため、
(高機能の)自閉症の人にとっては
うってつけのコミュニケーション方法だと言えます。

 

現代社会ではコンピューターの技術も発達し、
メールやライン、フェイスブックなどのSNSなどを利用した
仕事もたくさんあるため、
自閉症の人でも活躍できる場がこれからもどんどん増えていくでしょう。

 

自閉症の特別な能力

イギリスのケンブリッジ大学・自閉症研究センターの
所長サイモン・バロン=コーエン博士の研究によると、
女性は相手と親密な関係を結んだり、他人の気持ちを理解するといった「共感」する能力に優れており、
男性は数学やコンピューターのように予測できたり、コントロールできるようにする「システム化」の能力に優れている
と述べている。

 

そして自閉症やアスペルガーの人は
この男性的な「システム化」の能力に優れた力を発揮すると言われています。

 

現在の日本の社会においては
自閉症の人は評価されにくいと言えます。

 

私が教員をしていたときの同僚の先生に
高機能の自閉症が疑われる人がいて、
学力や知識は学校の中でも飛びぬけて優秀でしたが、
生徒とのコミュニケーションが苦手で対人関係に苦労していました。

 

私たちは「出来る事」よりも「できない事」に目を向けてしまいがちです。

 

そして特に自閉症の人はコミュニケーションという
できて当たり前の事が苦手なため、
社会から評価されにくい面があります。

 

では自閉症やアスペルガーの人が今の社会で活躍することはできないのでしょうか?

 

いえ、そんなことはなく逆にある分野においては天才的な才能を発揮するかもしれません。

 

先ほども書いたように
自閉症の人はシステム化する能力、つまり
予測できることが大得意です。

 

そして自分が興味を持ったことは
過剰に集中するという特性も持ち合わせています。

 

先ほどのケンブリッジ大学の研究では、
ケンブリッジ大学の数学を専攻する人の中で自閉症を持っている人の割合は
ほかの学科での割合に比べて何倍も高く、
理系に向いている特性であるとも言われています。

 

私は大学時代、工学部に所属していました。

 

大学生のときは
朝から晩まで一人で機械とにらめっこをしながら
研究のデータをとっていました。

 

今にして思うと、とても孤独で不毛な作業で
学校の先生のように人と触れ合う仕事とは
全然違っていたように思えます。

 

しかし社会の最先端の技術や宇宙の真理を見つける人は
このような地道な作業を飽きることなく続けらるという
特別な能力を持った人でないと成し遂げられないと思います。

 

さらに自閉症の人は興味のあるものに集中する能力だけでなく、
同じようなモノから違うものを見つける能力や
驚異的な記憶力、人一倍鋭い知覚など
一般の人がどんなに努力しても身に着けられない様な能力を持っている人もいます。

 

自閉症の人は人付き合いの多い一般的な社会では生きづらさを感じるかもしれませんが、
自分の興味関心のあることを追求する研究者の様な仕事では
その特性を活かしていくことができるかもしれません。

 

また自閉症のお子さんの場合、
できるだけ早期の段階で
コミュニケーションの訓練をしていくことも大事です。

 

どんなに優れた能力を持っていても、
私たちは一人では生きていけません。

 

自閉症の特別な能力を活かすことも大切ですが、
少しずつでも社会に適応する能力を育てていくためにも
お子さんが小さいうちから人間関係の練習をしていった方が良いと思います。

 

自閉症の人が活躍できる仕事とは?

自閉症の持つ強みを活かすためにも
お子さんが何に興味・関心を持っているかを知ることが大切です。

 

自閉症の人は興味関心のあるものについては
普通の人が真似できない様な力を発揮する場合があります。

 

たとえそれが一見無意味なことに見えても
それを否定せずに肯定してあげることで
お子さんの能力を伸ばすことにつながり、
自分の才能や強みに気づかせてくれるはずです。

 

自閉症の人の特性をまとめると

  • 興味関心のあることに集中力を発揮する
  • 数学や物理など物事を予測できることが得意
  • 細かな違いを見つけることが得意

などが挙げられます。

 

またコミュニケーションのスキルについても
お子さんが小さいうちから訓練した方が良いですが、
無理に人付き合いの多い社会に飛び込むのではなく、
パソコンを使った作業や研究など
一人で黙々と行える仕事や
フリーランスの仕事などであれば、
社会のしがらみから解放されて
能力を発揮できるようになるかもしれません。

 

自閉症に特性を活かせる仕事の一例

  • 会計士
  • 職人
  • 自動車整備士
  • 工業デザイナー
  • コンピュータープログラマー
  • 技術者
  • 庭師、園芸家
  • 科学者・学者 など

 

このページは

脳の個性を才能にかえる

を参考にさせていただきました。