発達障害児への4つの指導方法
発達障害のお子さんの子育て(学習)について
学校などの教育現場でよく使われる技法を紹介します。
お子さんの特性に合わせて
子育ての方法を考えてみてください。
視覚的情報をを与える
発達障害のお子さんは耳からの情報よりも
目からの情報の方が
処理(理解)しやすい場合があります。
何かを指示する場合は
絵の描かれたカードなどを用いると
理解しやすくなることがあります。
例えば
宿題をさせる時も言葉だけで
「宿題をやりなさい」と言うのではなく、
教科書やノートなど「学習道具」の絵を見せながら
指示をすると理解しやすい場合があります。
<カードの例>
お子さんによっては
視覚からより聴覚からの情報処理が得意な子もいますので、
お子さんの特性に合わせて工夫してみてください。
最後の一歩手前教える
発達障害のお子さんは
1度にたくさんの事を覚える事や
作業を身に着ける事が苦手です。
そのような時はスモールステップで学習をしていくと良いのですが、
発達障害のお子さんの場合は
最後の一歩手前から教えていく
背向型の学習が効果的です。
例えば、食器洗いをさせるとしましょう。
まずは食器洗いの作業を細かく分けます。
- 食べたお皿を台所まで運ぶ
- 食べ残した物をゴミ箱に捨てる
- スポンジに洗剤を付ける
- お皿を洗う
- 洗ったお皿を拭く
- お皿を食器棚に入れる
通常でしたら、1番から順に教えていきますが、
発達障害のお子さんの場合、
1〜5番までは作業を手伝ってあげて
6番だけ自分でできるようにする など
最後の一歩手前の手順から教えていくのが
背向型の学習になります。
背向型の学習を取り入れることによって
お子さんの「できる状況」が増えていき、
「できたね」とほめてあげる状況が多くなり
お子さんの自信や学習意欲向上につながるとされています。
発達障害のお子さんの子育てポイントは
できない事よりもできる事に注目して
ほめてあげる です。
ほめた行動は強化される
発達障害のお子さんに限らず、
人間は気持ちが良くなる行動をとる習性があります。
例えば私の友人に数学が天才的な人がいますが、
どうして数学が好きになったのか聞いたら、
「先生に褒められたのが嬉しかったから」 と言っていました。
人間の行動は褒められる(気持ちがいい)と
その行動が強化(積極的になる)され、
叱られる(嫌な気持ちになる)と
その行動が消去(消極的にある)されていきます。
特に発達障害のお子さんの場合、
言葉の裏を読み取ったり、
周りの空気や行動の理由を読み取るのが苦手です。
例えばあなたのお子さんが
興奮して暴れだした
という場面に出くわしたらどうしますか?
もしかしたら、
お菓子などを与える、わがままを聞いてあげる
などの対処をしてしまっているかもしれません。
「興奮して暴れる」という行動は「悪い行動」です。
しかし
「お菓子がもらえる」という結果は「」良い事です。
この時お子さんの脳の中では
暴れる→ご褒美がもらえる→良い結果がでる
という認識ができあがってしまい、
「暴れる」という行動が強化されてしまいます。
発達障害からちょっとズレますが、
私が担当した生徒の中には
お母さんにかまってほしくて
問題行動を起こす子もいました。
逆に良い事をしてもほめてもらえないと
良い事をしなくなってしまいます。
私が教員時代に心掛けたことのひとつに
当たり前の事は良い事
という考え方がありました。
例えば
- 学校に行く
- 元気よくあいさつをする
- きちんとお礼を言う
- そうじをする
- 宿題をする
- 忘れ物をしない
などです。
これらは出来て当たり前の事かもしれません。
しかし私がこれまで見てきた
いわゆる「問題のある子」は
こういった小さな事をほめてもらえなかった子が
少なからずいました。
多くの人は
良い事は特別な事だと思ってしまっています。
特別な事は普段なかなか起きません。
例えば「困っているお年寄りを助ける」ことはとても「良い事」です。
しかしそのような場面に毎日でくわすことは滅多にないでしょう。
もちろんボランティア精神で自分から
困っている人を見つけて手助けをするような子もいますが、
全体から見ればほんの一握りにすぎません。
高校生になって
宿題をやってきてエライね とか
学校に来ることができてエライね というのは
違和感があるかもしれません。
ですが、後に問題を抱えてしまうお子さんの中には
このような当たり前の行動を評価してもらえなかった子も少なくないのです。
特に小さいお子さんの場合、
完璧に物事を成し遂げるのは難しいと思います。
宿題をやれば間違っている箇所も多いし、
掃除をさせれば汚い場所も残っているでしょう。
しかしいきなりその事を指摘してしまうと、
お子さんの頭の中では
宿題→問題を間違えた→自分は頭が悪い→勉強が嫌い
お手伝い→怒られた→やりたくない
というような「連想」が出来上がってしまい、
良い行動が消去されてしまうのです。
特に発達障害のお子さんの場合は、
親が期待を込めて間違いを指摘したとしても
その意図を読み解くことができず、
良い事をしたのに叱られた
という認識・連想のみがのこってしまい、
自己肯定感の低下や二次障害を引き起こすきっかけになりかねません。
物事の基準をあなたの基準にするのではなく、
今のお子さんの基準で考え、
出来たことはキチンと認め、ほめてあげて、
いけないことは感情的にならず、
冷静に淡々と短く対応するようにすると
親子間での信頼関係も増していくのではないかと思います。
<行動の原則>
陽性強化の原則 |
ある行動の結果が「快」ならば、その行動は増えていく |
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罰の原則 |
ある行動の結果が不快ならば、その行動は減少していく。 |
消去の原理 |
ある行動を起こしても、結果として何の変化も起きない時、その行動は減少していく。 |
陰性強化の原理 |
ある行動を行うことにより不快な結果が避けられる場合、その行動は増えていく。 |
このページは
尾崎洋一 池田英俊 錦戸恵子 草野和子 著
ADHD及びその周辺の子どもたち
を参考にさせていただきました。